横浜ウォッチャー

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ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020 オンラインとリアルで開催!障害者と多様なプロによる現代アート国際展

ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020 プログラム発表会の様子(2020年8月24日撮影)

ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020 プログラム発表会の様子(2020年8月24日撮影)


3年に一度開催される、障害者と多様な分野のプロフェッショナルによる現代アート国際展「ヨコハマ・パラトリエンナーレ(略称:パラトリ)」。3回目でプロジェクトの集大成となる2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、オンラインと横浜市役所(アトリウムほか)を会場として開催されることとなりました。

 

 

 

2021年の東京パラ五輪開会式まであと1年と迫る2020年8月24日(月)、開催テーマとプログラムの概要が、新しく完成した横浜市役所 1階アトリウムにて発表されました。

ヨコハマ・パラトリエンナーレ総合ディレクター・栗栖良依さん

ヨコハマ・パラトリエンナーレ総合ディレクター・栗栖良依さん(2020年8月24日撮影)


 

プレゼンターは、ヨコハマ・パラトリエンナーレ総合ディレクターの栗栖良依(くりす よしえ)さん。横浜市立みなとみらい本町小学校5年生(56名)も来場し、公開授業も合わせて行われましたので、レポートします。

<INDEX>

 

ヨコハマ・パラトリエンナーレとは

「ヨコハマ・パラトリエンナーレ」は、2014年にスタート。横浜市東京2020参画プログラム「文化オリンピアード」として、障害のある・なしに関係なく文化芸術活動に参加したいと思う誰もが、出会い、そして共(ともに)創(つくる)アートプロジェクトとして誕生しました。

「発展進行型プロジェクト」と称し、2014年「はじめてに出会える場所」、2017年「とけあうところ」に続き、プロジェクトのゴールとしていた2020年は集大成とするべく進行中でした。

が、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえて準備してきた内容を見直し、「our curioCity ‒好奇心、解き放つ街へ」をテーマとし、オンラインとリアルイベントを融合、プレ会期(8月24日~)とコア会期(11月18日~24日)に4つのプログラムが行われることが発表されました。コロナ禍で孤立しがちな障害者も参加できるイベントの実現を目指します。

 

「誰もが住みやすい街に。みんなが持つ想像力・創造力に期待」

横浜市立みなとみらい本町小学校 5年生の皆さんとのフォトセッション(2020年8月24日撮影)

横浜市立みなとみらい本町小学校 5年生の皆さんとのフォトセッション(2020年8月24日撮影)

横浜市立みなとみらい本町小学校5年生(56名)が出席した公開授業では、ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017 アートドキュメンタリー映画「sense of oneness とけあうところ」(一部)を上映。

2017年の発表会当日、円形のステージで繰り広げられた「不思議の夜の大夜会」の様子が映し出されると、次のような感想があがりました。

 

 

「いろいろな人が、境目なく、混ざっていたのがいいなと思いました」

「義足の人とか車イスの人とか、踊るための工夫をしながらダンスしていた」

「車イスを使うからこそできるパフォーマンスが良かった」

栗栖さんは、

「障害があるとかないとか関係なく、不思議な世界をどう作り上げるかを考えました。想像力を駆使し、足りないものを補いながら、このメンバーだからこそのパフォーマンス、表現ができていたことに気づいてもらえたかな、と思います」とコメント。

また、映像の中にアカンパニスト(障害のある人と一緒に動いてくれる人)が何人いたか、アカンパニストになるための必要なことについて問いかけると、一人の生徒が次のように答えました。

周りの状況を見て、何が求められているのかを考えること。そして、その人が何をしたいのか考えることという、二つが必要だと思います。アカンパニストって、一人が相手のこともあるし、何人もが相手のこともあると思うんですけど……、一人だった場合、その人と周りの人とのズレがあって、そこを埋めるというか、人と人との考えを知るというか。それが必要なんじゃないかなと思います」

横浜市立みなとみらい本町小学校(代表者)とともに(2020年8月24日撮影)

横浜市立みなとみらい本町小学校(代表者)とともに(2020年8月24日撮影)

「すばらしい! 私が言いたいことを全部言ってくれました。この質問を大人にしても、なかなか答えられないです。アカンパニストって全体を見て、それぞれが持つ価値観の違いをバランス良く整えて、みんなが対等になって一緒に創作する場を作ることが重要。そして、アカンパニストは障害についてもよく調べていて知識を持っていて、ケガのないようにどう表現したらいいか、ということも考えています。一人を見ることも大事だし、全体を見ることも大事です。

映像を見て、言葉にできなくても、何か感じてもらえたかなと思います。想像力・創造力は誰もが持っているもの。それを発揮してもらえれば、横浜がもっと誰にでも住みやすい街になるはず。11月までにいろいろと調べてもらう機会があると思いますので、みんなのがんばり、活躍に期待します」と、栗栖さんは締めくくりました。

 

開催テーマとキービジュアルについて

ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020 キービジュアル

ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020 キービジュアル

ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020の開催テーマは「our curioCity ‒好奇心、解き放つ街へ」。

新型コロナウイルスの影響により、当たり前とされていた日常を失い、その有り難さに気づくと同時に、政府が示す新しい生活様式に人間としての生理的な違和感を感じ、新しい生き方を模索する日々。

改めて、自己の根のところにある感情や個性に気付き、表出したいという欲求が其処此処で溢れ出す……そんな時代のキーワードのひとつが「解放」という言葉。そして2014年から続く「パラトリ」の活動の源となっているのが、止むことのない「好奇心」。

先の読めない激動の2020年を、熱く駆け抜けたいという想いが込められています。

 

キービジュアルには、アメリカ人の写真家であり、教師やアクティビストとしても活躍されている視覚に障害のあるブルース・ホールさんが自閉症のお子さんを撮影した写真を選定。水をつかもうとする自閉症の少年とその瞬間をとらえた一枚。二人の好奇心がこの瞬間に詰まっているように感じられます。

これまで「常識を根底から問う」ことを目指してきたヨコハマ・パラトリエンナーレ。今回も既存の常識では考えられないような写真または写真家とその人の好奇心から切り取られた写真がキービジュアルとなっています。

 

4つのプログラムについて

「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020」ではオンラインとリアルイベントを融合し、プレ会期(8月24日~)とコア会期(11月18日~24日)に4つのプログラムが行われます。

障害者と多様な分野のプロがつくるメディア「パラトリテレビ」

パラトリテレビに出演する中嶋涼子さん(中央)と熊谷拓明さん(左)

パラトリテレビに出演する中嶋涼子さん(中央)と熊谷拓明さん(左)(2020年8月24日撮影)

プレ会期スタートとなる8月24日から開始した、障害者と多様な分野のプロがつくるメディア「パラトリテレビ」。オンラインとリアルが融合するパラトリ2020のメインコンテンツとなります。

パラトリを通じて出会ってきた人々が集結してオリジナル番組を制作、YouTubeで配信します。隔週1回日曜日の夕方配信。(第2回は9月13日)

番組ナビゲーターは、車椅子インフルエンサーとして活躍する中嶋涼子さんとパペット「Pちゃん」を操るダンサー・熊谷拓明さん、撮影・編集は先天性の聴覚障害を持つストリートダンサー・鹿子澤拳さんが担当。

リアルイベントが行われるコア会期には、横浜市役所アトリウムの特設ステージからの生配信も予定しています。

 

▼ヨコハマ・パラトリエンナーレ YouTubeチャンネル

www.youtube.com

 

障害のある表現者と多分野のアーティストによる読む展覧会
BOOK PROJECT「そのうち届くラブレター」

BOOK PROJECT「そのうち届くラブレター」キュレーターのリーダー・金澤韻さんがオンラインで登壇

BOOK PROJECT「そのうち届くラブレター」キュレーターのリーダー・金澤韻さんがオンラインで登壇(2020年8月24日撮影)

障害のある表現者と多分野のアーティストによる展覧会「そのうち届くラブレター~わかりあうことの不可能さと、あきらめないことについての考察~」

これまでのパラトリの取り組みの延長線上に立ち、「障害」とは何かを根底から問うテーマを設定した展覧会です。

人間が誰しも抱える、わかりあうことの不可能さを見据えながら、その絶望を乗り越えていく視点・姿勢をもった6人の作品に対し、8人と1組の表現者たちがそれぞれの方法で彼らの作品への応答を試みるというもの。

本の形式をとる「読む展覧会」で、横浜市役所で1000部無料配布するほか、公式ウェブサイトでも展開される予定です。

<キュレーター>
リーダー 金澤韻(かなざわこだま)/田中みゆき(たなかみゆき)/畑井恵(はたいめぐみ)

<参加アーティスト>※順不同
ジェス・トム(作家、美術家)/リ・ビンユアン現代美術家)/山本高之(現代美術家)/鎌江一美(やまなみ工房)/井口直人(さふらん生活園)/杉浦篤(工房集)/川戸由紀(アートかれん)

<応答するひと> ※順不同
松本美枝子(写真家、美術家)/中川美枝子(「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」スタッフ)/華雪(書家)/磯子区障害者地域活動ホーム+飯塚聡(映像作家)/柏木麻里(詩人)/船越雅代(料理家/アーティスト)/金氏徹平現代美術家) /dj sniff(音楽家)/横山裕一(美術家、漫画家)

 

オンラインで国境と時空を超えるプロジェクト「サーカスアニメーション」「パラトリみらいサミット」

サーカスアニメーション イメージ画像(提供:ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020)

サーカスアニメーション イメージ画像(提供:ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020)

サーカスアニメーション」では、両足義足のサーカスアーティストであるエリン・ボールをはじめとした世界のサーカスアーティストと日本初のソーシャルサーカスカンパニーSLOW CIRCUS PROJECTのメンバーが、時空を超えたサーカスアニメーションの共創に挑戦。

「前回のように人が集まって、サーカスのパフォーマンスを見ていただこうと準備していたのですが……、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、個別に撮影して合成するという方法に変更しました。思いつく限りの感染対策を施しながら、準備を進めています」(栗栖さん)

 

パラトリでは、障害のある人がアート活動に参加するための様々な障害を取り除くアクセスコーディネーターや、障害のある人と一緒に動いてくれるアカンパニスト(=伴奏者)の育成に取り組んできました。 

コア会期には、個性豊かなSLOW CIRCUS PROJECTのメンバーと、みなとみらい本町小学校5年生の子どもたちが議論を交わす「パラトリみらいサミット」を開催。“全人類アカンパニスト化計画!めざせ、だれかの伴奏者“をテーマに、みんなが暮らしやすい街について考えます。

 

「フード」「伝えかた」をテーマとするオンラインゼミ「Paratori LAB」

「食」を切り口に福祉や持続可能な社会について考え、学びあう「フードラボ」と、「伝えかた」をテーマに、多様な立場の人々と学び合う「メディアラボ」、ふたつのオンラインゼミを開催。

「フードラボ」では、フードデザイナー・中山晴奈さんが、「メディアラボ」では、車椅子インフルエンサー・中嶋涼子さんがディレクターをつとめ、ラボメンバーとともに語り、学び、そこで得たことを社会に向けて解き放つことを目指します。

コア会期には、横浜市役所アトリウムの特設ステージでリアルイベントの開催も予定されています。

ただいま参加者を募集中(参加費:有料、コア会期のリアルイベントのみ無料)。日程、内容、〆切等、くわしくは下記ページにてご確認ください。

www.paratriennale.net


動き始めたパラトリ2020。オンラインとリアルとで繰り広げられるプログラムをお楽しみください。

 

8月29日(土)まで、横浜市役所 2階プレゼンテーションスペースにて、これまでの歩みについて写真・映像・作品とともに紹介。(入場無料、9:00~20:00 ※最終日のみ17:00まで)

ヨコハマ・パラトリエンナーレ ドキュメント展示の様子(2020年8月24日撮影)

ヨコハマ・パラトリエンナーレ ドキュメント展示の様子(2020年8月24日撮影)

 

ヨコハマ・パラトリエンナーレ2020 開催概要

会期:プレ会期 2020年8月24日(月)~、コア会期 2020年11月18日(水)~24日(火)
場所:オンライン⇒https://paratriennale.net/2020
横浜市役所アトリウム(神奈川県横浜市中区本町6-50-10)

paratriennale.net

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▼ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017 レポート

travelyokohama.hatenablog.jp