横浜ウォッチャー

All About横浜 ガイド・タナベのブログ。横浜で見た・聞いた・食べたことをさくっと綴ります。

「芸術とは何か?」という大命題に挑み続ける、蒐集家としての村上隆の大規模コレクション展

f:id:travelyokohama:20160130142523j:plain▲展示室「村上隆の脳内世界」にて、プレス撮影に応える村上隆氏(2016年1月29日撮影)

2016年1月30日から横浜美術館で「村上隆のスーパーフラット・コレクション ─蕭白、魯山人からキーファーまで─」がはじまります。世界的アーティストとして知られる村上隆氏ですが、キュレーター、ギャラリスト、プロデューサーなど、いろいろな“顔”を持っています。村上氏が独自の眼と美意識で近年蒐集してきた5000点超のコレクションの中から約400点を展示する、世界初の大規模なコレクション展です。開幕前日に行われた内覧会のようすをレポートします。圧倒的なスケールに驚きました!

 

 

 

エントランスの大空間に大型作品がずらりと「彫刻の庭」

エントランスを入るといきなり現れるのが「彫刻の庭」。大空間であるグランドギャラリーには、大型作品やインスタレーションがずらりと展示されています。個人のコレクションの枠を超えた、サイズ、価格的にも「限界への挑戦」といえるような壮大な作品だけでなく、盗難金庫といった美術作品の意味や価値の定まらないものにお金を出す、という人間の行為について問いを投げかけるかのような作品が並びます。

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エスカレーターをあがるとそこには、Mr.《にゃあ~~おはよっ!》とその下にある小さすぎるエレベーター、マウリツィオ・カテラン《無題》、そして馬車のような、奈良美智《California Orange Covered Wagon》が。馬車の中には所狭しと奈良美智氏の作品が飾られていて、なかなか展示室に入れません(笑)。

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日常の美である陶磁器の展示と日本美の淵源をたどる「日本・用・美」

 はじめの展示室4は「日本・用・美」と題し、村上隆氏のコレクションの中でも質量ともに群を抜く陶磁器の作品群と日本美術の奇想の系譜とされる曽我蕭白や白隠慧鶴ら江戸中期の絵画、豊臣秀吉の書などの史料が展示されています。日本美の淵源、日本人の美意識に向けられた村上隆氏の眼差しをたどります。

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来館者がデッサンするコーナーが!?「スタディルーム&ファクトリー」

デイヴィット・シュリグリーのインスタレーションである、人体デッサン教室。ここでは、来館者が室内中央に立つ人体モデル彫刻のデッサンを自由に描き、部屋の壁面に展示していくというものです。その隣りには、真珠のオブジェと映像が組み合わされた、ミカ・ロッテンバーグのインスタレーションも。合わせて、アメリカのレストランで食事中の客が見つけ、オークションで高額落札された真珠も展示されています。「価値」や「対価」といったものを考えさせられます。

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まさにカオス!「村上隆の脳内世界」

 まるで村上隆氏の脳内をのぞくような感覚に陥る、展示室5「村上隆の脳内世界」。木彫りの仏像、福助人形、巨大な人形、チャッピー人形、そしてボリビアの儀礼用木杯、ネパールのお経、昭和期のボロ布などが並べられており、「玉石混合」「ノーロジック」な村上隆氏の宝箱、あるいはおもちゃ箱をひっくり返したような世界が広がります。

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村上隆氏の視点で戦後の美術史を紐解く「1950-2015」

展示室6、7では「1950-2015」と題し、村上隆氏のコレクションの主要な柱となる1950年代から現在までの国内外のアート作品が、制作年に沿って機械的に並べられています。1962年生まれの村上氏自身の生きてきた時間とほぼ重なる年代でもあります。日本美術史に独自の足跡を残した作家たちの作品やアウトサイダー・アートの系譜、若き日の村上氏のスターだったダグ・アンド・マイク・スターンの写真、日常を芸術作品化した近年の若手の作品など、村上氏の独自の美術の文脈といった様々な関心が見てとれます。

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ひとつひとつをじっくり見ていたら、一日いても時間が足りない……! 圧倒される物量感で「芸術とは何か?」と迫ってくる村上隆コレクション展。ぜひ足を運んでみてください。

※画像はすべて1月29日に行われたプレス内覧会にて撮影。転載はご遠慮ください。また通常時の撮影については会場の指示に従ってください。

 

■企画展「村上隆のスーパーフラット・コレクション展 ─蕭白、魯山人からキーファーまで─」
期間:2016年1月30日(土)~4月3日(日)
場所:横浜美術館
休館日:木曜日 ※2月11日(木・祝)は開館
時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
料金:一般1500円、大学・高校生900円、中学生400円、65歳以上1400円
※小学生以下無料、毎週土曜日は高校生以下無料、障がい者手帳を持つ方とその介護者は無料
※観覧当日に限り、横浜美術館コレクション展も観覧可

yokohama.art.museum

蒐集した作品から学びとったすべての成果は村上氏自身の作品の中に。

■関連展覧会「村上隆の五百羅漢図展」
期間:開催中~2016年3月6日(日)
場所:森美術館(東京都港区)

www.mori.art.museum